日本初の体験農園をひらいた
加藤農園
加藤義貴さんのお話

より多くの人に、土にふれ、
野菜を育てるよろこびを

東京都練馬区南大泉にある加藤農園で、義貴さんの父、義松さんが「緑と農の体験塾」を開いたのは1996年のこと。2021年には25周年を迎えました。都市における農業のあり方を考え、行きついたのが、野菜づくりの体験農園だったといいます。この開園をきっかけに、賛同する農家が増え、現在では全国に広がっています。お話を伺った義貴さんも、2019年度より、ほど近くにある「井頭体験農園」の2代目園主として、野菜づくりの手ほどきをされています。
どちらの園も、目的とするのは、農業を知ってもらうこと。野菜づくりを楽しんでもらうこと。そして、いろいろな人とのコミュニティを広げてもらうことです。プロが教えてくれるので、初心者でも気軽に利用できる。楽しいふれあいが生まれる。農業の奥深いおもしろさを追求することもできます。
トマトやじゃがいも、枝豆、ブロッコリー、いちごなど、年間を通して30種類ほど栽培。年50回ほど講習会を開催し、利用者には定期的な参加をお願いしているとのことです。「畑の手入れはもちろん、ただ仲間に会いに来園される方もいるなど、みなさん、思い思いに楽しまれています」と義貴さんも自然に笑みがこぼれます。

体験農園での堆肥の使われ方は

体験の利用期間は、3月中旬〜翌1月末。どんな野菜を植え、育て、収穫、また新たな植え付けと計画立てていくわけですが、その前に必ず行うのが土壌診断。診断結果にもとづき、畑の土がバランスよくなるよう、肥料設計をします。ここの畑ではもともとキャベツを栽培しており、当時使っていたリン酸や石灰分の影響が、25年を経たいまでも土の性質に残っているのだそうです。
そうした肥料設計の観点においても、『東京和牛株式会社』の完熟堆肥は扱いやすいと感じられているよう。牛ふんベースなので、チッ素やリン酸カリなどが高すぎない。しかもニオイがほぼない。住宅に囲まれた農園では、とてもありがたいと。土の肥料成分が偏っていると、野菜が育たなくなる。肥料をやりすぎると、味も、栄養価も落ちる。おいしい野菜は、必然的に栄養価も高くなる。せっかく野菜づくりを楽しまれる人には、おいしくて栄養のあるものに育ててほしいですから、と思いを話されました。

最先端のトマトファームも

加藤農園のすぐ隣で、義貴さんがもうひとつ手がけられているのが「加藤トマトファーム」。ビニール張りのハウスの中は、温度・湿度をはじめ、さまざまなセンサーを用いて、つねにトマトの生育に適した状態に制御されています。ココヤシを培地に、養液の栄養で育つトマトが10m以上にわたってつるを伸ばし、それが何列も並んでいるさまは圧巻。未来の野菜工場はこうなるのでは、と思わせる光景でした。もともとオランダの農法だといいますが、受粉のためにハウス内に放たれたクロマルハナバチもまた、オランダ産なのだと。
ここでは、中玉とミニトマトをメインに栽培。8月に苗を植え、10月には収穫、それが6月末までつづくとのことです。ちなみにハウス前に置かれた、トマト自動販売機ロッカーをのぞくと、午前中にもかかわらず、すべて売り切れ。おいしさと人気ぶりがうかがえました。

さらなる農業のファンづくりへ

義貴さんが2020年夏に、井頭体験農園近くの遊休農地を使って期間限定で開催した「巨大とうもろこし迷路」。 高さ2m以上にも育った、1万5,000本ものとうもろこしの間を縫うように進みながら、収穫体験もできるとあって、大盛況を呼んだとのことです。いま、これを種まきから参加できるかたちに発展させようと考えているのだと。
また、大根やじゃがいも掘りなど、単品の収穫体験ではなく、いろんな野菜を収穫できる方が楽しいだろう。参加した人が、持ち帰る野菜でその日の夕飯のメニューをあれこれ思い巡らせられるように。
さらに、畑横の宅地でマルシェを開いたり、トマトや近くの果樹園で採れたナシ・ブドウを使いアイス&ジュースのキッチンカーを、などなど義貴さんの中からアイデアが次々湧き出してきます。体験農園につづく、地域とともに生きる農業の新たな楽しい道を、つねに探られているのでしょう。

井頭体験農園 
https://igashira-taiken-farm.sakuraweb.com
加藤トマトファーム 
https://kato-tomato-farm.jp
加藤農園 
https://kato-taiken-farm.jp