畑を最大限に回転させる
田倉農園
田倉寿治さんのお話

東京発、安心・安全な新鮮野菜を

都立小金井公園の北隣、東京都西東京市の田倉農園。農園主の田倉寿治さんは、都内では珍しくなった専業農家として、ご自宅裏ともう一区画、合わせて79アールの畑で、20品目もの野菜を並行して栽培。個人のお客様はもちろん、都内各地の学校給食やレストランなど数多くの施設に納められています。
届ける野菜は、多種かつ週あたり1tにものぼるため、5棟のハウスと露地はつねにフル回転。一般的な農家さんが、畑を春から夏、夏から秋の年2回ほど回転させるのに対し、田倉農園では綿密な計画のもと、露地で3〜4回、ハウスは6〜7回も回転させています。しかも、田倉さんは安心・安全、栄養豊富でおいしく新鮮であることに徹底してこだわっていて、農薬の低減、化学肥料は最小に、をモットーとしています。これを可能にするには、土壌そのものの栄養分を最大限に活かすことが必須です。だからこそ、「土づくりには一切妥協することはない」と断言されました。

『東京和牛株式会社』の完熟堆肥が欠かせない

減・農薬、化学肥料に真摯に取り組む田倉さんの畑では、先代の頃から堆肥を施していました。そして、東日本大震災後、『東京和牛株式会社』の完熟堆肥を本格的に使うように。学校給食用などに野菜を提供していることもあり、出所がはっきりしていて、成分のチェックもしっかり、不要なものを含まない、の条件を満たしたのが『東京和牛株式会社』の完熟堆肥だったのです。
牛ふんからつくられる完熟堆肥は、天然の有機肥料のため安心して使えます。とりわけ、『東京和牛株式会社』のものは、程よい粒だちでパラパラしていて、農家の嫌う土を固くすることがなく、土がフカフカするのがありがたいと。もちろん完熟なので、ニオイもほとんどありません。田倉さんは、これに吸収がよくなるカリン酸石灰を混ぜて使われています。また過多にならないよう、施すのは年2回くらいに抑えているのだと。
土壌環境の面で、堆肥を入れた畑は、土壌団粒と呼ばれるスポンジ状の断面となって、土の中の酸素と水分量を調節してくれるように。まさに、堆肥は「土の気孔」をひらくのです、と田倉さん。また、肥料の観点では、堆肥は食事でいう主食にあたり、畑のエネルギー源であると。これを軸にすることにより、調味料の役割の化学肥料を半減できる。土のバランスがとれ、健康な野菜が育ち、農薬も減らせる。このいい循環を継続していくために、定期的に土壌診断を行い、土の力を保つよう努められています。

春まだ浅い時季に、
青々とした畑はここだけ

3月初旬、周囲の畑が、土を休めているのを横目に、ここでは菜花やほうれん草をはじめ、野菜が植えられたトンネルがずらりと並んでいます。冬場はビニールを3枚重ね貼りし、気温の上昇とともに剥いでいくなどの工夫を加え、可能にしているとのことです。ハウスの中では小松菜が青々と葉を広げ、これを収穫したら次はトマトというように、つねに次なる作付けが待ち構えています。「うちには農閑期はないから」と。
そのなかで、田倉さんは、いかに均等に生育させるかを重視。同じ時季に植え付けた野菜が、同じように育てば、一気に収穫でき、作業効率が上がる。大きさや品質のバラツキも小さく、安定供給につながるからです。たとえ期待通りの結果が出なかった場合にも、原因が天候なのか、病害によるものなのか必ず突き詰め、もとを断つ方法を探り、データとして蓄積し、同じことを繰り返さないよう活かされています。
また、省力化も積極的に推進。もともとネギ用の1条植付機だったものを、メーカーに相談し何度も試作機を製作いただくなど、試行錯誤を繰り返しながら、玉ねぎ用の2条植付機に改良したり。ミキサー車のような車両による堆肥の自動散布を図ったり。畑内の連絡は無線でと、知恵を絞られています。

食育にもチカラを

学校給食用の野菜を手がけていることもあって、畑のない学校を中心に授業を依頼され、出向くことがよくあります、と田倉さん。都会では土にふれることが少なく、野菜がどのように育つか、知らない子も多い。そんな子たちに、少しでもおいしい野菜づくりに興味をもってもらえたらと、田倉さんは自ら写真や動画を撮影・編集。対面、オンラインでの食育にチカラを入れています。近いうちに、畑にWiFiを飛ばし、作業のようすをライブで伝えられたらとも考えられているようです。
となりに消費者がいて、輸送に時間を要しないから、野菜をギリギリまで完熟させることができ、もぎたてのおいしさを届けられる。その利点を活かすとともに、土地が狭いハンデをアイデアで克服していく。都市農業を次の世代につないでいくためにも、「できることは、すべてやる」。にこやかに語る田倉さんの目にはチカラがみなぎっていました。

田倉農園 
www.takura-noen.com