完熟堆肥で、東京の土を支えたい

わたしたちがつくる完熟堆肥は、
天然有機肥料

わたしたち『東京和牛株式会社』は、200頭以上の黒毛和種の雌牛を、徹底したこだわりをもって育てるとともに、その副産物である牛ふんから良質な完熟堆肥もつくっています。完熟堆肥と呼ぶことができるのは、腐りやすい有機物の分解が終わり、腐りにくい有機物と灰分、残り水分の配合物となったものです。完熟といえば、有機物の分解を完全に終えたものと誤解されがちですが、そうではありません。残った腐りにくい有機物を、畑の中の微生物がさらに分解していくことで、土壌改善ができるのです。無機物だけだと化学肥料と同じであり、有機農業を行うことはできませんから。試行錯誤の末、牛ふんにオガクズやワラを混ぜ込み、発酵させる現在の製法にたどり着きました。
つくっている過程で、夏季に水分量を調節する以外、よけいなものを加えることはありません。完熟状態になった堆肥は、汚物感やニオイがなく、取り扱いやすい。成分もしっかり検査されているので、安心・安全。まさしく天然有機肥料、と言える完熟堆肥を東京の土、循環型農業を支える気概をもって、お届けしています。

発酵中の山をパワーショベルで切り返す。とたんに水蒸気が噴き出す。発酵が進んでいる証。空気にふれているところしか発酵が進まないから、2、3週間ごとにこの作業を繰り返す必要があるのだ。

竹内牧場の完熟堆肥ができるまで

完熟堆肥の製造工程をご紹介しておきましょう。牛舎を掃除した際に出た牛ふんに、水分調節のためのオガクズ、ワラを混ぜ込み、キルン型発酵機へ。その中で回し揺らし、1次発酵を促します。1次発酵を終えたら、コンベアを使って山積みにし、2次発酵させていきます。発酵には酸素と適切な水分を必要とするため、空気にふれていない山の内部をパワーショベルで定期的に切り返す作業を行います。山の底にあたる床にも溝を設け、そこから風を送って、発酵面をふやしています。こうした切り返しを繰り返しながら、ひと山すべてを完熟堆肥化させていくのです。
発酵が進むとともに、水蒸気とそれにともなう熱が発生。温度は80°Cにものぼるように。この状態になると、微生物はほぼ死滅。代わって高温に強い白い糸状の放線菌が増殖してきます。そして、この放線菌による分解が終わると、ゆっくりと温度が下がりはじめるので、それが完熟化のサインとなります。季節や天候の影響もあって一概にはいえませんが、ここまでにおおよそ3カ月を要します。切り返しの頻度が多いほど、当然、堆肥化の進行も早くなります。

酸素のある環境下で、有機物を炭酸ガスと水などに分解する好気性菌の働きで堆肥化が進む。熟成中の山に温度計を差し込むと「73℃」。白い菌糸を伸ばす放線菌が増殖しはじめると、完熟化は近い。

牛が健康であってこその、
良質な完熟堆肥

竹内牧場がいちばん大切にしているのは、いうまでもなく牛たちが健康であることです。牛はけっこう繊細で、ちょっとしたストレスなどで食欲が落ちたり、病気にかかってしまったりします。とくに買ってきたばかりの若牛は、環境に順応するまで目が離せません。牛たちには必ず血液検査を行うなど、つねに細心の注意を払っていますが、やはり毎日食べさせるものが、なにより重要。混合飼料をベースに良質なものだけを厳選し、年齢や健康状態に合わせてバランスよく組み合わせて与えています。加えて、βカロテンが豊富な北米産の青草プレミアムチモシーや、オーストラリア産オーツ麦を。繊維が硬く、胃を活性化させるサトウキビの絞りかす(バイオバガス)を。腸内環境がよくなるよう乳酸菌を。13〜14カ月齢からは、肉にサシをいれるため、青草から稲ワラに。と日々ようすを見ながら、調整しています。
また、牧場の周辺には、緑の森や地下茎を張り巡らす竹林が広がり、奥多摩の山々も間近に。この自然環境が雨水を磨き、清らかで豊かな地下水脈をもたらします。そこから引いた水の恵みを、牛たちがいつもおいしくたっぷりと飲めるように、こまめな水槽の清掃も欠かしません。健康であれば、よく食べる。大きく育つ。当然、ふんの状態もよくなり、良質な完熟堆肥ができる。この好循環をさらに追求していきます。

森と竹林に囲まれた、ストレスの少ない閑静な環境の中で、確かな肥育技術と愛情を注がれ、すくすくと大きく、健康に育つ牛たち。だからこそ、肉質も国内最高クラスに。その品質の高さは、一流シェフたちに認められてはいるものの、一般的にはまだまだ無名。今後、食肉店やレストランなど、より多くの方々に知っていただけたら。